一般社団法人武雄青年会議所
第53代理事長
石丸 太郎

所信

一 燈 照 隅

~和を胸に~

はじめに

時代を小説に例えるならば、「平成」という物語はエピローグへと向かい、新たな物語のプロローグが幕を開けようとしています。
戦後復興期、当時の青年たちは戦争により多くの仲間や同級生、先輩後輩を失い230万人もの犠牲を払った失意の中に日本を再建しなければなりませんでした。復興に向け各方面の運動が活発になる中、1945年9月3日「新日本の再建は、我々青年の仕事である」と宣言された東京青年商工会議所(東京青年会議所の前身)48名の「明るく豊かな社会の実現」の情熱は全国各地へと拡がり、1967年に全国で363番目のLOMとして武雄青年会議所が創立されました。以来、「より美しく、より豊かに、より正しく明るい社会になること」を切望する精神は、半世紀以上の時を経た今も胸に深く刻み込まれ受け継がれています。この創始の精神と礎の襷を連綿として継承していく為に、2016年、私たちは「創立50周年記念提言」を提唱し、これからの10年、そして未だ見ぬ未来への想いを「6つの運動指針」として掲げました。
本年、平成が終わりを告げます。社会の構造が変わりゆく新たな時代の幕開けを迎えます。「新現代の日本の創造は、我々青年の仕事である」ことを基軸とし「創立50周年記念提言」「6つの運動指針」が根幹をなして展開する私たちの物語の第53章を始めましょう。

照隅 ~和を胸に~

自灯明という言葉があります。ご存知のように「他者に頼らず、自らを拠りどころとしなさい」という釈尊の教えですが、人は皆、自分という灯火を携えて、この先見えない暗闇のような人生を自らの居場所を照らしながら生きなければならないと説かれました。現代社会においての灯火とは何か?を考えた時に、社会の成長は連帯や連携、あるいは合意や合併から成立していることに改めて気づき、その仕組みを紐解くと一燈照隅という言葉に辿り着きました。人が持つ心の灯りを力点と考えるとするならば、人の成長と共にその灯りが輝きを増し、やがて、隣の誰かへと点じて大きな灯火となって繋がっていきます。私たち一人ひとりが携えている灯りは、大きくて明るいものではないかも知れませんが、小さくとも力強く、まずはしっかりと自らの居場所を照らす灯りであって欲しい。この灯りがやがて私たちの住み暮らす地域を、そして日本を明るく照らすと確信してやみません。もちろん、世の中に変化・変革をもたらすことは容易ではありません。しかし、歴史において世の中の変化・変革の始まりは、誰か一人の心の高まりが周囲に影響を与え、一つの声を生み出し、その連鎖が大きなエネルギーへ繋がっていったことは紛れもない事実です。私は、この連鎖の作用こそが、今の私たちに求められる気概と覚悟であると確信し、今年度のテーマを『一燈照隅 ~和を胸に~』と掲げました。この言葉は、伝教大師・最澄が「山家学生式(さんげがくしょうしき)」の冒頭に「照千一隅 此則國寶」と書き記したものを、戦後日本の首相の指南役と評された安岡正篤氏が表現した言葉で、正しくは“一燈照隅 万燈照国”と続きます。「一つの灯りは隅しか照らせないが、万の灯りは国全体を照らすことができる」ことを言い表し、転じて解釈すると「一人ひとりが自分の役割を懸命に果たすことが、組織全体にとって最も貴重である。」ということに繋がります。
青年会議所の会員資格には、20歳から40歳までという年齢制限があります。この組織特有の性質は、常に所属するメンバーの新陳代謝が繰り返されることにより、20年の年代層が同じ目的を持って関わる中で必然的な人材育成が行われる。これが、それまでと違った灯りを生んでいるのだと思います。私自身、多くの先輩たちの背中を追いかけて様々な学びを得てきました。そして、気が付けば40歳を目前に控え、後ろを振り向くと若いメンバーが若き日の私と同じように背中を追いかけて来ています。しかも、眩しい。今の私は、自らの灯りを彼ら以上に力強く照らし、連綿と受け継がれてきた志や魂を伝播し、次代への襷を繋ぐ責任があると同時に、入会して来る小さな灯りを、大きな灯りへ、燈し続ける灯りへ、そして点じる灯りへと育てていく担いがあるのだと感じています。
人は自らが経験してきたこと以上のことは想像でしか語ることが出来ません。幸いにして、私はLOMでの経験に加え、2013年度からは佐賀ブロック協議会出向の機会にも恵まれ、活動のステージが拡がることで初めて見る景色と見える景色を経験しました。この経験値は今の私を支える大きな糧となっています。昨年度、武雄JCは11年ぶりに佐賀ブロック大会の主管を担い、準備中は不慣れな環境の中にあってそれぞれに苦労もありましたが、一人一役の担いを各々が責任をもって果たし、大会を成功裡に収めることができたこと、メンバーがLOMの活動だけに留まらず、俯瞰的な視野を養い成長する機会を得たことは私にとって何よりの喜びでもありました。この経験をきっかけに、是非とも多くのメンバーに積極的な姿勢で新たなステージへ挑戦し、新しい灯りを燈して欲しいと思います。人は自分の能力を遥かに超えるものを求められる環境に身を置いた時に初めて成長していくものだと考えます。未だ知り得ない自らの潜在能力が、初めて身を置くそのステージで見つかるでしょう。ブロック協議会のみならず九州地区協議会、日本青年会議所、JCI、与えられたチャンスに大いに可能性を見出しましょう。

結びに

 「青年会議所との出会いは偶然ではなく、引き寄せられた必然であった。」
私は、大学を卒業の後、家業を承継すべく武雄へと帰郷しました。学生生活を終え、数年振りに故郷の土を踏めたことへの喜び、戻ってくる場所を守り、暖かく待ってくれていた両親への感謝、そして、自分自身が恵まれた環境に置かれていることを痛感しました。もちろん、感傷的な気分に浸るのも束の間で、慣れない仕事を覚えることが精一杯の日々がスタートし、同時に後継者としての心構えを求められ、これからの会社をどうしていくのか、自分自身がどのような人間になるのか、答えのない自問自答を繰り返す毎日でした。そんな折に、ある先輩との出会いと歴代理事長でもある父の勧めもあって青年会議所の扉をノックしたのです。座右の銘に『男の人生、友達探し』を掲げていた当時の私には絶好のタイミングと、最高の居場所だと感じたように記憶しています。入会したことで、多くの仲間に出会うことが出来ました。同じ世代でありながら、様々な人生観をもった仲間、卓越した発想力と行動力で他を牽引する仲間、どの仲間との出会いも私の人生に心地よい刺激と健全な競争心を与えてくれました。どこまでも眩しく輝く仲間たちの灯火の光に導かれたのでしょう、「何か一つでも学び取りたい」そんな一心でLOMの事業はもちろん、その後の懇親会にも必ず参加し、酒を酌み交わしながらの会話にも勉強になる事が沢山有って、これもまた私にとっては代え難い貴重な時間でした。よくよく考えてみれば、これらの出会いは偶然でなく、求めたからこそ手に入れることができたもの。「必然」だったと気付きました。人にはそれぞれ個性があり、役割があります。多くの個性や役割と出会うことは、新たな自分と出会うチャンスでもあります。そして、その出会いを求めるからこそ訪れる。
私たちの灯りが、昨日よりも今日、今日よりも明日とより輝きを増して光を放つことを信じて、2019年度、共に力点となりながら力強く歩みを進めましょう。
求めればやってくる。必然的に出会う。信じよう。
自分の信じる道を行く人にしか見えない風景がきっとある。
胸を張って、キミらしく、いこう。

基本方針

未来を担う子供たちを暖かく照らせ

 私たち青年会議所に所属する20~40歳の世代は、概ねゆとり世代(22~31歳)とミニマムライフ世代(30~38歳)に該当します。定義には諸説ありますが、社会背景を含めて成長過程の環境がイメージできる○○世代という表現で過去を振り返ると、青年会議所発足当時の世代は、大正世代・昭和一桁世代。武雄青年会議所の創立時の世代は、昭和一桁世代、焼け跡世代、戦中生まれ世代、全共闘世代、団塊の世代と5世代に分かれます。それぞれの世代については各々お調べ頂くとして、いかに激動の時代を過ごしてきた先輩達であったかは想像に難くありません。当時、今の私たちと同じ年齢の青年が、地域の振興や日本の将来を確かな方向へ進めるためにどうすべきかを語り、数多くの灯りが集まって大きな灯りとして子や孫が置かれる将来や子供たちの未来について創造していたものと推測します。では、私たちの時代の子供たちを健全に育むにはどうすべきか、最も多感で感受性の強い時期にあるこの子達をどのように導けばいいでしょうか。人口減少が著しく、少子化が国家の大きな問題として取り上げられる昨今、子供たちの存在は宝であり未来への大きな投資ですから、子供たちの成長に寄与することは、必然的に取り組む事業であり、特に自主性をもって夢や目標を抱く契機となる機会を創造したいと考えます。
 私たちの世代は、自身を縛る状況を極端に嫌い、一定の生活水準を保ちたい世代、堅実で安定した生活を求め、無駄がなく自分に心地いいものを求める世代と評されています。物質的に恵まれた環境で育ってきた世代の私たちは、子供たちに伝えるべきものが沢山あります。子供たちの自主性や継続力を育み、何事にも挑戦する気持ちを養っていくことで明るい未来の創造を子供たちと共有していきたいと思います。

 

武雄の未来を明るく照らせ

 私たちは、武雄の魅力を熟知し、それを上手く伝えることが出来ているでしょうか。田舎暮らしに関心がある人向けに情報を提供している『田舎暮らしの本(宝島社)』では、毎年様々な世代へジャンル分けしたアンケートを実施し、「住みたい田舎ベストランキング」を発表しています。そのランキングで、武雄市はこれまでに2016年度の3位を筆頭に幾度となく上位に名前が挙がってきました。このことから、全国的にも移住先として着目され高い人気を誇っている事実が伺えます。しかしながら一方で、全国的な人口減少の大きな波に飲み込まれているのも事実です。2006年、1市2町が合併し、武雄市は人口51,947人で新たな舵を切りました。それから10余年が経過し、2018年の統計において人口48,263人と実に3,600人余りが減少しています。この減少率を大きいと捉えるのか、踏み止まっていると捉えるのか解釈は様々だと思いますが、厚労省が発表した2017年度人口動態統計における合計特殊出生率は1.43となっており、今後、人口がさらに減少していくことは避けられない状況のようです。
 しかし、想像してみて下さい。人口が減少しても個人の生産性や所得・収入の増加が実現すれば、まちは魅力的な町になるのではないでしょうか。実現するためには、現実をしっかりと受け止めて建設的な考えで前を向くしかありませんが、理想を語るより足元を整理して次の一手を考えることが今は大切なのではないかと思います。国家レベルの課題に対して、私たちが講じる手立ては微力かも知れませんが、思考を柔軟にして地域的なレベルの課題にすり替えて対峙していくことが求められていると考えます。創立50周年記念提言において「武雄に集まり・武雄に留まるまちづくり」を推し進めることを宣言しました。本年度も引き続き行政と手を携えながら、武雄市が有する潜在的な魅力と、時代を先取りした仕掛けや仕組みを考え、定住促進、人口増加そして生産性の向上へとつながる運動を展開します。民間の立場から、青年の観点から、武雄の未来に明るい一灯の光を燈すべく努めてまいります。

 

自らが光明となれ

 1950年5月、現在の日本青年会議所の前身となるJC懇談会が開催され、JC運動の行動綱領として「修練」「奉仕」「友情」の三信条が採択されました。その翌年には日本青年会議所創立に際して、この三信条が定款へと記されました。私たちの青年会議所における運動は、この三つの信条に基づき形成されていることを忘れてはなりません。近年、武雄青年会議所への入会年齢は上昇傾向にあります。この傾向は全国的に見ても同様で平均在籍年数は4年5ヶ月とのデータが出ています。ということは即ち、短い在籍期間の中で青年会議所について深く理解し、効果的に集約して活動すること、尚且つ効率的なリーダーシップが発揮できるようになることが求められています。だからこそ、あらゆる事業の機会に積極的に触れ、自ら自己の成長を求める強い向上心が必要です。自分自身が成長することは周囲に好循環を生み出すことは言うまでもありません。勿論、成長によって身に付けた知識や智慧、形成した価値観は生活基盤である仕事や家庭に大いに還元する必要がありますが、メンバー達の連鎖が他の誰かへ繋がって大きく広がることは、私たち自身の生活基盤はより強固なものに、経済基盤はより磐石なものになり、目標である明るい豊かな社会づくりに寄与していくものだと確信します。また、自己の成長の度合いは他者と比較するものではなく、自己が理想とする自分と現在との比較です。その際に感じたギャップや葛藤を突き破ってこそ成長した自分に出会えるのです。
 こうした結果、似たような価値観の持ち主が集まって集団を形成しようとすることは自然な流れです。「会員拡大こそ青年会議所運動である」という言葉を耳にしたことがあると思いますが、この言葉には、年間を通じて行う事業に新たな息吹が吹き込まれることで、そこから広がった輪が新たな波紋を作るという真意があることを理解しておかなければなりません。一人の新たな仲間が加わることは“プラス1”ではなく、その家族や周りの知人友人、さらには地域の人達にも伝播させることに繋がるので無限の広がりや可能性を秘めています。そうした観点から、会員拡大とは単純に会員数を増やせばいいのではなく、同じような価値観を持つ者が社会活動を行おうとする際の根本的で普遍的な活動であることを常に忘れてはなりません。組織の維持・運営・事業内容の構築においては一定数の会員が必要であることも紛れもない事実ですが、何より魅力的な集団の形成が第一の目標であるわけです。自分の灯りが個へ、集団へ伝播することを理解し共有して欲しい。私たちはまだまだ未熟で成長過程の最中です。自らの灯火をより輝かせるために青年会議所における修練の機会を積極的に掴みながら、自己が理想とする自分、皆に目標とされるような自分へと成長するために、自らが壁を作るようなことになってならないと思っています。

 

あなたと一生の付き合いがしたい

 一生涯で心からの友達だと呼べる人に出会えることはそう多くないと思います。それは恐らく、共に過ごした時間の長さだけではなく、その密度と距離感、心と心でのぶつかり合いが求められるからだと思っています。そう考えると青年会議所の環境は、心からの友達に出会う可能性を大いに秘めた学び舎ではないでしょうか。私たちの活動では、常に確固たる目的を掲げます。その目的に向かって、メンバー各々が一切の妥協を排し侃侃諤諤と意見を戦わせ、最良の結果を得るために万全の方策を模索します。時には悩み苦しみ、時には喜び、メンバーと共にそのプロセスを経ていけば次第にベクトルが一致していきます。このサイクルこそが青年会議所特有の仲間との強い絆、汗と涙と魂が宿った繋がりを生むのです。また、この環境は長い歴史によって育まれたものであることを忘れてはいけません。30や40歳年上の人や県外の人でも「JC出身」と聞けば自然と共通の話題や会話が生まれるもので、青年会議所自体の長い歴史と、全国組織としての伝統の産物だと思います。
「あなたと一生の付き合いがしたい。」この言葉は3年前に会員拡大に訪れた先で、先輩が候補者に対して口説かれたワンフレーズです。私は、この言葉に心を打たれました。字面では上手く伝えることが出来ませんが、その言葉を発する先輩の表情には揺るぎない覚悟と信念が見えたのです。それ以来、私は活動の中で、まずは一生の付き合いができる自分を探し出すことを目標として掲げました。縁あって同じ時間に同じ行動をして価値観を共有する仲間。お互いが自分自身にとことん惚れて欲しいと欲し、青年会議所活動の全てに惚れて欲しいと欲す。私は、奉仕団体の組織活動でしか味わえぬ貴重な時間に真剣に向き合って欲しいのです。さらに欲を言えば、世代を超えた交流に目を向けて欲しい。そして、どんな困難や苦境に晒されても消えることのない友情の灯火を一つでも多く燈して、より強固な結束を携えた真の仲間づくりを目指したいのです。

 

唯一無二の存在であるために

 私たちは一般社団法人という社会的に認められた法人格を有する組織である以上、守らなければならないルールや約束が存在します。それらを遵守し、仲間や友人、地域や他団体からの信頼と負託に応える必要があります。そのためには、メンバー一人ひとりがガバナンスの意識を高め、自分が置かれている環境や立場を客観的に理解し得なければなりません。青年会議所とは文字通り会議に重きを置いた組織です。会議の質を向上させる努力は不可欠な要素であり、その先にある全ての物事の完成度を左右すると言っても過言ではありません。メンバー全てが主体的に関わり、より精度の高い意見を導き出す会議運営を心掛けます。また、議決した事項については、組織体系やガバナンスに基づき全メンバーの積極的な参画を促して、諸事業に参加させることにより士気を高めていきます。一方では、財務体制の健全性も担保しなければなりません。会計基準のルールに則り、適正な予算計上と決算処理が行える体制を構築します。さらには、各種事業における費用対効果についても十分に精査し、限られた予算を有効に活用できるようにして、高次元の費用対効果を求めます。
 私たちが地域や他団体からの信頼や負託を得るためには、積極的な情報公開と戦略的な広報活動が必要です。半世紀以上の歴史と、数々の実績を有する武雄青年会議所ですが、まだまだ市民の皆さんへの認知度が熟しているとは言い難い場面も見られます。インターネット環境が普及した昨今、紙媒体のみならず様々なコンテンツを通したあらゆる広告物が溢れていますが、その中に埋もれることなく、何気なく見ている人の心に赤々とした火を燈らせることができるようになりたい。そのために戦略的な広報や信頼度が高く知的要素を含んだ情報発信に努めます。これまでのネット媒体をさらに充実させることは勿論、その他の有効な媒体も活用しながら、地域における認知度向上とブランディングの強化に努めます。そして、私たちの運動や存在が唯一無二という評価を頂けるような大きな運動に繋がるよう仲間とともに歩みます。